母から電話がありました。
「エアコンが、またすぐ切れてしまう!昨日の夜中から、寝れない!」と。
少し前にも同じようなことを言っていたので、一度母の家に行って様子を見てみることにしました。
エアコンそのものが故障しているのか、それともリモコンの設定なのか。
母に聞いてみると、どうも「お掃除モード」など、リモコンに表示される小さな文字がよく分からない様子でした。
考えてみれば、エアコンのリモコンって文字が小さい。
私たちでも「これ何の表示?」と思うことがあるくらいです。
母を見ると、片手にリモコン、もう片方の手には虫眼鏡。
リモコンの小さな画面を、虫眼鏡で一生懸命のぞいていました。
その姿を見て、
「それ、両手がふさがって余計に見にくくない?」
と思った私。
「リモコンを見るときだけ、老眼鏡をかけたら?」
と言ってみました。
すると母は、
「メガネは耳が痛いから嫌や!」
と、最初は拒否。
以前の私なら、ここで、
「ずっとかけるわけじゃないやん!リモコン見るときだけやん!」
なんて、強い口調で言っていたかもしれません。
でも最近、母に対する自分の言い方を少し意識するようになりました。
同じことを伝えるにしても、きつく言われると嫌な気持ちになるみたい。
それは私だって同じです。
そこで今回は、
「ずっとじゃなくていいよ。リモコンを見るときだけ老眼鏡にしようよ」
と、できるだけやさしく言ってみました。
すると母は、老眼鏡をかけてくれたのです。
ちゃんと表示も見えました。
そのとき私は心の中で、
「やった!」
と思いました。
ほんの小さなことです。
でも以前なら、母が反発して、私もイライラして終わっていたかもしれない。
言い方をひとつ変えただけで、こんなに違うんだなと思いました。
5年ぶりにエアコンクリーニング
とはいえ、エアコンはその後も調子が今ひとつ。
そういえば、このエアコン、かなり長い間きちんと掃除していません。
聞いてみると、もう5年ほどエアコンクリーニングをしていないようでした。
そこで、思い切ってプロの方にお願いすることにしました。
前日の夜に連絡したのですが、なんと翌日に来てくださいました。
これは本当に助かりました。
作業は夕方少し遅い時間になりましたが、エアコンを分解してきれいに洗ってもらいました。
そして洗浄後の水を見せてもらうと……
真っ黒。
「こんなに汚れてたんや!」
母と二人でびっくりです。
しかも、掃除をして終わりではありませんでした。
母にリモコンの使い方まで丁寧に説明してくださったのです。
高齢になると、機械そのものよりも「使い方が分からない」ということが意外と困りごとになるのかもしれません。
家族が説明すると、ついお互いに感情が入ってしまいます。
第三者の方がゆっくり説明してくださると、母も素直に聞ける。
これもひとつ勉強になりました。
業者さんによると、エアコンのクリーニングは、冷房を使い終わる夏の終わりごろにしておくのがおすすめとのこと。
エアコンの中は湿気が残り、カビが発生することもあるそうです。
「これは忘れないようにしておこう」
と思いました。
待っている間に、母の家を整える
業者さんが来るまで時間があったので、この日は母の家の掃除もしました。
あちらを片づけ、こちらを拭いて。
そして久しぶりに、母の家の台所に立ちました。
作ったのは、ミネストローネとカポナータの間のような、野菜のトマト煮込み。
きっちり名前のついた料理ではないけれど、冷蔵庫にある野菜をトマト缶でコトコト煮込みました。
あとで母は、お友達と一緒に食べたそうです。
「おいしかったよ」
と言ってくれました。
母のところに来てくださるヘルパーさんも、時々トマト煮込みを作ってくださいます。
ある方は洋風。
もう一人の方は、じゃがいもやちくわを入れた少し和風のトマト煮込み。
最初は「トマトにちくわ?」と思ったけれど、これが意外においしい。
同じトマト缶を使っても、作る人によって全然違う料理になる。
料理って面白いですね。
整ったのは、母の家だけじゃなかった
この日は、母のエアコンが心配で家に行っただけでした。
ところが気がつけば、
エアコンをきれいにしてもらい、家を掃除して、料理を作って。
母の暮らしを少し整える一日になりました。
そしてもうひとつ。
母への言い方を変えてみて、うまくいった。
「老眼鏡をかけて」
ではなく、
「リモコンを見るときだけ、かけてみようよ」
ほんの少し言い方を変えただけです。
母を変えようとするより、まず自分の伝え方を変える。
そのほうが案外うまくいくのかもしれません。
母が老眼鏡をかけてくれたときの、あの小さな「やった!」。
たぶん私は、しばらく忘れないと思います。
エアコンをきれいにしてもらった一日。
でも振り返ってみると、少し整ったのは母の家だけではなく、私と母の間の空気もだったのかもしれません。