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あうんの呼吸が通じなくなった。理由は「信頼貯金」でした

あうんの呼吸が通じなくなった。理由は「信頼貯金」でした

言葉にしなくても伝わるのが、密かな楽しみだった私。転勤先で通じなくなって気づいたのは、相手との間に積み上げる「信頼貯金」のことでした。

目次

私には、密かな楽しみがあります。

言葉にしなかったことが、相手に伝わる瞬間です。

全部は言わない。

少しだけ言って、あとは相手に委ねる。

それで、私の思った通りのことを相手がしてくれたとき、なんとも言えず嬉しいのです。

以心伝心ともいいますね。

お酒の席で、ついで欲しいと思った時に、ビールをつぐとか、コース料理でちょうど食べ終えた頃に次の料理が出てくるとか、そんな感じです。

最近では、「今日はゴミの日だった!」と私が言っただけで、夫がサッと着替えて、ゴミ出しをしてくれました。

ゴミ袋を持って出かける夫を見送る妻

だから私は、ちょっとしたゲームのように、わざと言葉を減らす癖がありました。

最近、それが通じない

ところが、いつからか、このゲームがうまくいかなくなりました。

伝えたつもりが、伝わっていない。

そんなつもりじゃなかったのに、誤解される。

「最近の人は、察してくれないなあ」

そう嘆きそうになって、ふと手が止まりました。

夫とは、今もちゃんと通じるのです。

足りなければ「それ、どういうこと?」と聞いてもくれる。

相手の察しが悪くなったわけでも、私の伝える力が落ちたわけでもなさそうです。

では、何が違うのだろう。

私はずっと、貯金のある人に囲まれていた

考えてみて、気づきました。

若い頃の私の周りには、長い付き合いの人ばかりがいたのです。

一緒に過ごした時間が、たっぷりある人たち。

いわば「信頼貯金」が貯まっている人たちでした。

だから、少し言葉にしただけで、全部わかってもらえた。

あうんの呼吸は、私の特技ではなかったのです。

相手との間に積み上げた、貯金のおかげでした。

それに、私の周りにはサービス精神が旺盛な人が多かった。

いつも誰かを喜ばせることを考えて、動いている人たちでした。

ところが結婚してから、夫の転勤で三度、住む場所が変わりました。

そのたびに、周りは初めて会う人ばかり。

貯金は、ゼロからです。

ゼロの相手に、貯金があるつもりで話していたのですから、通じるはずがありませんでした。

引っ越しの段ボールと、窓辺の空っぽの瓶

貯まり方は、人それぞれ

転勤先で、いろんな人に出会いました。

何ヶ月か過ごしただけで、すぐに貯金が貯まる人。

どれだけ時間をかけても、なかなか貯まらない人。

そして、全然貯まっていないと思っていたのに、お別れの間際になって、

「ああ、ちゃんと貯まっていたんだな」

と気づかせてくれた人。

信頼貯金には、通帳がありません。

今いくら貯まっているのか、自分にも相手にも見えないのです。

貯金ゼロから始める

だから最近は、こう考えるようにしています。

初めての相手、まだ距離のある相手とは、貯金ゼロだと思ってお付き合いする。

これは、相手を信用しないということではありません。

「わかってくれて当たり前」という期待を、そっと下ろすということです。

期待を下ろすと、不思議と気持ちが楽になります。

通じなくても、がっかりしない。

省略せずに、順番に、理由も添えて話す。

以前、初心者の方にパソコンを教えていた頃の話し方を思い出します。

相手は大人で、ただ前提を共有していないだけ。

上からでも下からでもなく、同じ高さで、情報だけを丁寧に。

カフェで向かい合って丁寧に話す二人

あうんの呼吸は、やめません

あのゲームは、貯金のある人との楽しみとして、大切に取っておきます。

夫や、長い付き合いの友人と。

そして、貯金ゼロの相手に言葉を尽くして、ちゃんと伝わったとき。

それは、あうんの呼吸とはまた別の嬉しさです。

今、うまく話せないと感じているあの人とも、見えないところで、少しずつ貯まっているのかもしれません。

貯まっていないかもしれません。

どちらでもいいように、今日もゼロのつもりで、丁寧に話してみようと思います。

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